品格のある洒落
〜錦地 名古屋帯
今回は昨年の秋より発表しました新しい名古屋帯に焦点を当てて紹介したいと思います。
製作前の漠然としたイメージとしては、これまでの帛撰のものづくりには無かった趣のもの、また帯のデザインというよりかは、生地/テキスタイルをつくり、それを帯にする(してみる)という発想を何故か強く持っていました。
発想とか想像というものは、ゼロから生まれるのではなく、やはりどこかそれまでに見た(見てきた)ものをベースに生まれるものだと思います。今回のように新しい帯をつくろうという時であっても、それまでに見てきた良い雰囲気の帯というものがやはり思い浮かびますし、どういう意匠図(デザイン)が西陣の織り帯として成立しやすいかということも頭の中によぎります。
しかし、今までになかった新しいものをつくるには、今までの経験に基づいた発想でデザインしても駄目だろうと思いますし、だからといってただ突飛な発想だけでは、着物と一体になる帯という商品には成り得ないとも思います。ふたつの相反する思いの間でいつも悩むのです。
ただ、それが面白いと思えるか。ちぐはぐなイメージがまとまるまでの苦しさ、楽しさを乗り越えることこそが、ものづくりの醍醐味、面白さです。最終的に商品のかたちを決める際は、最初の直感に頼り、「好きなように作ろう」と思い切る。そんな感じでしょうか。
どのように使うとか、どんな着物に合わせるというのは、使っていただける方に委ね、考えていただき、楽しんでもらう機会を提供したいと思っています。作った物(商品)に込めた我々の思いと、使う人の物に対する思いや愛着が合わさって、真のオリジナルの物になると思っています。
ここに紹介しました11点の名古屋帯。ひとつ明確に意識したことは、「錦地」という生地です。錦地は西陣の織り帯の最もスタンダードな生地で、締めやすく、機能性にすぐれており、また絹本来の光沢が存分に出ます。 「品格のある洒落」がこの名古屋帯のテーマです。
(2013年9月)
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