京都西陣 株式会社帛撰(はくせん) hakusen
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新作 ―最近、ふと感じたことについて―

新作
―最近、ふと感じたことについて―

「名物裂」とは、禅の思想と武家階級の結びつきの中で生まれた茶道という格調高いあそびのなかで用いられる名器(茶器)の袋や包みに使用された、当時最も珍貴な裂の数々である。それらは主に室町時代に明との貿易により輸入された外来の染織品で、当時の高級武家人の教養面の指導を担当していた茶人たちによって選択されたものであるから、いわば茶道権威者お墨付きの優秀品ということである。とはいえ、茶人たちが各々の裂の品評みたいなことを行ったわけでもなければ、何か由緒ある謂れを持った裂であるかの検討をしたわけでもない。当時最も教養に優れ、豊富な知識を持った茶人が、それぞれの鑑賞眼によって、茶器の名品・名物を包んだり入れたりするのに相応しかろうと選択したのである。

そのように選ばれた名物裂が当時輸入された染織品の中でたしかにトップクラスに優れたものであることは現代においても認められている。しかし、当時の茶人たちが当時の外来染織品の全てを見渡たすことができたかというと、そうではない。選ばれた裂はある意味偶然である。彼らが見逃した染織品の中にまた異なる趣を持った珍貴な裂があったかも知れない。茶人たちの選んだ裂を「名物裂」と括ることで、これらの裂が現代まで伝えらたことに感服するが、「名物裂」という限られた枠組みの中に籠っていては、感性の許容が狭いのではという印象を受ける。

そういった印象は和装の世界においても同じだ。「きもの」のスタイルをつくるにあたって、暗黙の制約みたいなものが抑制をかけていまいか。もちろんそれは「きもの」を発信する和装業界に多分に要因がある。「きもの」をかたちづくるアイテムごとに極めてイージーにジャンル分けをして、本来自由であるはずの個人の「きものスタイル」までカテゴライズしてしまっていることが、お洒落・ファッションにおいてどれほど無意味でナンセンスで、個人にとって如何につまらないことか、気付くべきではないか。

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ここに改めて紹介する製品は、帛撰のオリジナルです。我が社もものづくりにおいて参考にした素材は数多あります。上代裂・有職文様・能装束・琳派・更紗、そして名物裂も。微妙な生地の風合いや独自の配色感覚にこだわり、帛撰ならではの「本歌取り」を続けてきました。

我が社の製品には暗黙の制約もイージーなジャンル分けもありません。個人が個々の自由なスタイルをつくるのに役立ってほしいし、自由なセンスを持った新しい「現代の名物裂」に仕立て上げてほしいと願っています。

袋帯

「袋帯 袿錦 更紗絣文」「袋帯 錦地 大蜀江華文」

なごや帯

「なごや帯 錦地 ラジャスタン狩猟文」「なごや帯 錦地 更紗洋花文」「なごや帯 錦地 ラジャスタン更紗」「なごや帯 錦地 円文」
「なごや帯 錦地 更紗華文」「なごや帯 錦地 天国の庭」「なごや帯 錦地 東大寺残欠」
(2016年5月)
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