今月ご紹介する袋帯は、羅という織技と、夾纈という染色技法を駆使した作品です。「羅」に続いて*1今回は「夾纈」についてお話します。
夾纈(きょうけち)とは、臈纈(ろうけち)、纐纈(こうけち)と共に「天平の三纈(さんけち)」のひとつ。臈纈は今現在いうところの「ローケツ染」、纐纈は「絞り染」です。
生地上に染料を置いた時、染料が生地にしみこんでいくの止める必要があります。滲みを止めなければ文様になりません。つまり、三纈とは天平時代に用いられた“防染法”です。その昔は滲みを止める方法がありませんでした。
夾纈は上代裂*2の類です。しかし、その技法は謎。辻が花染より古い“謎の染”です。
夾は「はさむ」、纈は「染める」というところから「板締め」であろうことは想像されますが、確かな方法は解っていません。正倉院の中に染められたものは多く残っています。しかしそのための道具――木型は一枚も残っていないのです。
夾纈作家の内田昭司氏によると、インドの博物館に夾纈に使ったと思わしきお椀型の木型が残っているそうです。しかし染められた裂地といえば、今のところ正倉院にしかなく、インドにも中国にも残っていません。日本に渡ってきたのは陸路なのか海路なのか・・・? 夾纈はまさに“謎の染”なのです。
一例として、夾纈は下記の図のように染められます。
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