「菱連珠文」の意匠は正倉院に伝わる上代裂*から。この文様は「連珠円文」とその中に入った「子持ち菱」で構成されている。
上代裂の中でも、いわゆる「錦」と位置付けられる格の高い裂は、鹿や鳳凰、龍や獅子や鳥、花や葡萄など、具象的な形を文様化したものが多い。菱連珠文のような幾何学的な文様は、上代裂全体ではしばしば見られるものの、錦の文様としては見られない。
幾何学模様とは紀元前10世紀から紀元前7世紀ごろ、ギリシャ人によって初めて用いられた様式で、その後交易によって各地に広まっていったと言われています。
このような幾何学的な形に、古代人は何を連想したのでしょうか。○△□はすべてのかたちの元(素)でしょうか。はっきり知りませんが、自分勝手にそう理解しています。最もプリミティブなこれらのかたちは、反転したり、回転したり、どこまでも繋がり、無限に拡張していきます。廃れることのない、美に対する感性の原点ではあるまいか。そんなことを感じています。
*上代裂:飛鳥・天平時代の裂地のこと。法隆寺裂、正倉院裂がその代表で、中国よりもたらされたものと、日本で織られたものとがあります。こちら(2010年5月)に詳しく記述しています。
(2016年11月) |