そもそも絹は自然なドレープ性に優れています。ドレープ性とは、織物を吊り下げた時の垂れ具合のこと。ドレープ性は衣服を美しく見せるための大切な要素だと思います。
経錦*1は経糸の密度の高い織物です。糸が経に並列し、屈曲が少ないため、優れたドレープ性が現れます。絹本来の光沢に富んだ織物と言えるでしょう。
機にかける経糸を主として、織物のデザインを設計するというのは、たぶん絣にはじまり、これは織物を創作する人間の最も原始的な発想だと思います。献上する帛(はく=きぬおりもの)、つまり錦として最初に創られたのは、おそらく経錦でしょう。のちに、より大きな文様と華やかな色糸遣いが可能な緯錦*2の技術が伝えられてからは、経錦は一度途絶えます。
しかしこの経錦を眺めていると、彩色こそ控え目でも、絹そのものの品格というものが浮かんでくる感じがします。
*1経錦:「訪問着 経錦 段替文」(2008年6月)参照
*2緯錦:「緯錦」とは(2008年7月)参照
(2013年4月) |