京都西陣 株式会社帛撰(はくせん) hakusen
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GALLERY/ギャラリー[今月の帯・バックナンバー]

番外編 帛撰会2012春

今回は、5月に行いました第21回目の帛撰会において発表しました帯を何点かご紹介します。
帛撰会は株式会社帛撰の年に一度の新作発表会です。
袋帯 袿錦 能衣菊花文

袋帯 袿錦 能衣菊華文

袋帯「袿錦」は平安時代の貴族女房の準正装である「小袿」*1に着想を得ました。高貴な女性がかつて着用した装束の繊細で上品な生地、色目、文様に習った、弊社のオリジナル商品です。

*1袿(うちき):「うちに着るもの=はおって着るもの」からきた名称だと考えられています。袿は何枚も重ねて着用するため、上に着るものほど、身丈・袖幅を少しずつ小さくして仕立てます。最も上に着る袿を小袿といい、小袿には特に華麗な有職文が施されました。

袋帯 袿錦 菊桜文

袋帯「袿錦」の地組織は平織の変形ということになります。経糸(たていと)・緯糸(よこいと)ともに極細の糸を使用していますが、一般の西陣帯よりも緯糸の密度が高いため、薄地でありながらしっかりとした生地に仕上がっています。仕立ての際は、生地と共色の帯芯を用いるのが好ましいです。
薄地ゆえに軽く、また軽快なニュアンスがあります。色目や文様によって袷用・単用、場合によっては夏物としても締めていただけます。
いわゆる西陣の帯らしい重厚感とは違う、清涼感、優雅さを感じていただけるかと思います。
袋帯 袿錦 菊桜文
袋帯 ゴブラン 山道

袋帯 ゴブラン 山道

ゴブラン織*2は、経糸・緯糸ともに3色〜5色の色糸を組み合わせた、平織の生地です。色糸の組み合わせによってどのような色相になるかをイメージしながら創作にあたるため、創り手の感性が表に出やすい織物の一つと言えます。
特筆すべき点は、
◎経・緯、複数の色糸の多重組織によるやわらかな色相と独特の風合い
◎やわらかな色相に加えて、経糸の吊りぼかし(先染めのぼかし 絣の技術の一つ)の優雅さ
◎組織上、生地の表面には経糸がより多くあらわれているので、絹本来の艶と生地のドレープが魅力
離れて眺めた時の色合いと雰囲気。良い意味でぼんやりとした余情があり、一つの錦の在り方ではと思わせる織物です。

*2ゴブラン織:バックナンバー「訪問着 ゴブラン 山道」もご参照ください。

本袋帯 唐織 有職唐太鼓

有職*3文様は、天皇・皇族・公家などの調度品・装束等の文様に使用されています。戦前は一般の人々が有職文様を使用することはなかったのですが、今では特に和服の文様として、染の着物や西陣帯などに多用されています。
本品は公家装束の襲色(かさねいろ)の感覚ではなく、白地に白糸とわずかな色糸でやさしく仕上げてみました。配色の妙なるもので、現代的なドレス感覚に仕上がりつつも、西陣伝統の唐織の技法・糸使いはそのままに、新しい錦の品位が出ているのではと考えています。

*3有職:バックナンバー「有職織物」もご参照ください。
本袋帯 唐織 有職唐太鼓
袋帯 錦地 献上縅

袋帯 錦地 献上縅

縅(おどし)とは、日本の小札(こざね)式甲冑の製造様式のこと。小札板を革や糸で結び合わせることをいいます。
この帯は伊予札縅(いよざねおどし) *4の漆塗りや金箔装飾と、糸威(いとおどし)*5の意匠の美しさにアレンジを加えて表現したものです。
縅は西陣の帯の意匠としてよく用いられるのですが、こういったアレンジの仕方もあるのかと、職人の方々のセンスに感服するばかりです。
本漆本金箔の錦帯です。

*4伊予札縅:伊予の職人により考案されたもので、室町時代から流行した甲冑鎧の小札の一種。
*5糸威:絲威しとも書く。絹糸を組んだ組紐を用いて縅したもの。

袋帯 本唐織 椿

こちらの帯は新作ではありませんが、我が社の代表的な帯として最後にご紹介させていだだきます。
経糸には特殊生糸「江州だるま糸」*6を使用しています。琵琶湖の北西、浅井と大音の2軒のみで製糸される生糸で、和楽器の弦(琴・三味線など)として主に使用されます。だるま糸は「生引き」という繰糸法で、80度の熱湯の中にある繭から、人間の手と稲藁で作った箒を使って、短時間で糸を引きます。通常の糸よりも多くのセリシンと水分を含んだ、強度と艶のある糸に仕上がります。
江州だるま糸を経糸に使用した本唐織の生地の張りと艶は素晴らしく、これぞ西陣の錦と言えます。

*6江州だるま糸:バックナンバー「袋帯 唐織 椿」もご参照ください。
袋帯 本唐織 椿
(2012年6月)

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